●顎を短くした上で先端を前に出すとなれば一般的には中抜き+末梢骨片前方移動でしょう。
●しかし単に短くする時、中抜きをすべきか削り(切り落し)で行くかは識者の意見の分かれるところです。
中抜きの方が優れているという医師は、そこには頸部からのオトガイ筋肉群が付着しているから、そこを剥がすと顎〜頸部にかけて弛むと主張します。削りの方が優れているという医師は、女性のキュッと尖った可愛い顎を作る時、顎先の骨を直接削って尖らせる事ができるので、骨の形状として中抜きより優れていると主張します。医学論争の渦中にあると言えます。
●女性らしいアゴを作る場合、中抜きで末梢骨片を尖らせるためにドンドン骨片の両端を削り尖らせ、剥いだ骨膜を顔面側の骨に縫い付けるのをやるなら、最初から顎先を削って後で骨膜を縫い付けるのと大して変わらないものです。
●それでアゴをV字型に削って欲しい等となれば最初から中抜きでなく骨の切り落とし&削りを行い、一度外したオトガイ筋肉群は後で骨に括り付ければ良いのです。
これは他の部位で考えれば、エラ削りでは骨付きでもなく咬筋を剥がして下顎角を削るわけですし、整形外科的にも手関節では前腕伸筋麻痺に屈腱移行が骨付きでなく行われています。自験例ですが足関節で麻痺した前径骨筋の代わりに後径骨筋腱を骨を付けずに前方に移行しも背屈を可能とした事があります。要は強大な力が加わらない限り骨片付きに拘る必要はないと私は考えます。
●エラ削りは外板を切って且つ、下縁をスティック状に切り取る。順番を逆にスティック状に切り落として、外板を削る等ありますが、外板を削るのは正面顔を小さく見せるので容易に理解できますが、下顎後方下縁をスティック上に削るとは何のためでしょうか?
●これは正面顔のためではなく斜めや特に横顔の改善のためです。エラ削りと言えば昔はエラの角をただ落とすだけでしたが、スティック状に切るとはエラの角を落とすにしても傾斜を起してエラより大分前の下顎下縁も落とし、エラの角が術前より上にできたようにする手術です。下顎骨下縁をアゴからエラに向かって切り上げる手術とも言えます。
エラが大きいと頑固で意固地な性格に見えますが、さりとて昔のエラ削りのようにエラがなくなってしまうのも、おかしな輪郭になりますので、エラがあるけど小さいものにする手術がスティック状に切る手術と言えます。
●輪郭の手術で唯一口の中からでなく皮膚側を切らなければならないのが、頬骨弓の後方の削り・骨切りの操作です。頬骨弓の弓とは「アーチ」ですからこの顔の横径を小さくするのを「アーチリダクション」とも言います。
この場合、皮膚切開を美容外科医がフェイスリフトで慣れている耳上部の前方切開で行くか、頬骨弓直上のモミアゲからで行くかは術者で意見が分かれます。
●前者は骨切り部から遠いため傷は長いですが、皮下筋膜をリフトアップさせることで術後のタルミに少しでも良いことが挙げられます。後者は削り・骨切りを合わせても約1cmの短い切開で良い利点があります。
私は両方やってきましたが、前者の耳の前の切開でのリフトアップは頬骨付近には力が有効に働かず、骨の上の軟部組織の下垂、特に顔の前方近くなれば、やらなくても変わらない感じです。ですから長い傷をつけた割にはメリットが小さいと考えています。従って今は「もみあげ」部の切開で行うのを常としています。
●写真は手術中の方向の写真ですので下側が眉側で上側が頬側です。出っ張っている白いのが骨です。この他院修正例は頬骨弓の前後の骨切りと正中移動は出来ていましたが、骨切り部前と後が高いままでした。前では眼窩に近い頬骨が全く削られておらず、そのためカダフィー大佐の下瞼のタルミ外側と似た出っ張りとなっていました。これは口腔内からでは一番見え難いところなので、前の術者は手術操作が上手く出来なかったのかと想像します。これに対して、私は再度口腔内アプローチで行く事も考えましたが、前回の手術が私の術式と随分違う事、患者さんからは今度こそ確実に綺麗に削って欲しいという強いご希望があり、骨がよく見える下瞼縁切開にて削らせて頂きました。なおこの部位は丁寧に縫合すれば傷が消えたように綺麗になります。
尚、モミ上げの段差は超音波骨削りで容易に治せますが、片刃型平ノミの小幅なものでも可能です。